閉校に当たってのご挨拶

すさみ町立 佐本小・中学校 校 長   那 須 勝 美

小学校創立は、明治10年、中学校創立は、昭和22年、以来、激動の日本の近・現代史を、常にこの地域の人々と共に生きてきて、今、その歴史の大きな流れの中で、佐本小・中学校は静かにその幕を降ろそうとしています。
「 古座の流れの水清く 呼べば答える山々や ああ我が里の学舎に…」 で始まる佐本小学校の校歌、「峰重なりて雲を呼び 連なる谷は霧を吐く ここ古座川の水上に…」 で始まる佐本中学校の校歌、2年前の着任式にて初めて聞いたその時から、私はこの両校の校歌が大好きになりました。歌詞も曲も実に素晴らしく趣の深い校歌であります。
この両校の素晴らしい校歌を共に歌い、ここで多くの仲間と共に励まし合い、競い合い、学び合って、立派に巣立ちゆかれた多くの卒業生の皆様方にとりましては、社会の趨勢とはいえ、言葉にならぬその寂しさを到底禁じ得ないことと拝察致します。
 私にとりましては、本校での勤務は、僅か2年間という短い期間ではありましたが、本校のすばらしい伝統―地域と共に歩む―を大切に受け継ぎ、極小規模校ならではこそ…と言えるような教育活動の推進・創造に全教職員と共に微力ながら努めて参りました。
 しかし、今振り返れば、何一つとして充分なことも出来ず大変お恥ずかしい限りではありますが、にもかかわりませず、保護者の皆様方はじめ、地域の多くの皆様方には、言葉では尽くせぬ程の温かいご支援・ご厚情を賜りつつ、本校職員たちと共に、日々の教育活動に邁進させて頂けたことは大変な幸せでございました。お陰で、この二年間の一日一日は、私にとりましては非常に充実した日々でありました。
今後、本校の児童生徒たち8名は、この4月から、周参見小学校及び周参見中学校の児童生徒として、また1名は高校生として、新たな学校生活を送ることになり、必ずや本校出身の児童生徒としての誇りと自覚を持ってしっかりと頑張ってくれるものと確信致しておりますが、彼らにとっての心の故郷は、やはりこの「 佐本 」であります。皆様方におかれましては、今後ともこの子どもたちのことをどうぞ温かくお見守り下さいますようよろしくお願い申し上げます。
歴史と伝統に輝くこの佐本小・中学校の最後の1ページを、こうして皆様方と共にめくらせて頂けたことを甚だ光栄に存じますと共に、後になりましたが、この130有余年間、本校教育の振興に絶大なるお力添えを賜りました数え切れぬ程多くの皆様方に、心から厚く、深く、御礼を申し上げご挨拶と致します。

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